

前回お伝えしたように、社名を決め、ビジョンを決め、行動指針を決め、意気揚々と船出したわたしたち、ネクスウェイ。
当時は、日常的にもビジョン・行動指針に則った働き方を称える活動を張り切って行っていました。
例えば「週刊5ways」という社内メルマガ。毎号ひとりにフォーカスし、その人の姿勢がわたしたちの行動指針である5waysのどれに該当するかを書いていくもので、文末には次にフォーカスして欲しい人と、その人は5waysのどれにあたるかを指名する、数珠つなぎ形式のメールマガジンでした。
Vol.1でご紹介した四半期に1回の決起集会「キックオフ」でも、活躍したメンバーの表彰と共に、みんなで決めたビジョンや行動指針を社内に浸透させるためのコンテンツも用意したりしていました。
この頃、現場には、新しい会社として船出したばかりの高揚感や、未来に向けた希望、そんなものが溢れていました。
でも実は、ネクスウェイの売上はリクルートから分社する前から、下がり始めていたのです。もちろん、わたしたちも知ってはいました。知ってはいたものの、でも新会社として独立し、さぁ、前に進むぞ!という雰囲気が勝ち、現場での危機感はそこまで強くなかったように記憶しています。
そんな中、2006年1月、突然の臨時集会が開催され、その場で告げられたのは、社長が変わること。そして、分社直後から推進していたシステム開発が失敗したこと。
その結果、ネクスウェイの経営の状態がわたしたちの想像よりもずっと深刻だということです。
船出したばかりのネクスウェイ、このままでは沈没する可能性もある。だから、この状況下でどう頑張っていくのかを考えよう。経営ボードと現場の見ている目線を合わせ、総力をあげたいから、良いことだけではなく、悪いことも包み隠さず共有しようじゃないか、というのがこの臨時集会の主旨でした。
(ちなみに、わたしは当時内定者でしたが、人事がわたしたち内定者に向けた説明の場を設けてくれて、現社長からも新社長からも直接話しを聞くことができ、比較的すんなりと受け入れることができました。まぁ、それはわたしがあまりにも世の中のことを知らない学生だったからかもしれませんが…)
2006年4月に、新しい社長が就任し、会社の雰囲気も徐々に変わり始めました。
当時の社長がよくこんな話をしていたことを覚えています。
「ビジョンとプロダクトだけでは事業は作れない。
”ビジョンなくして事業なし、しかし、ビジョンだけでは事業にならず”
だから、ネクスウェイはまず事業戦略をちゃんと組み立てよう。」
会社の目指すベクトルを黒字化に切り、現状の把握と打ち手を定め、今こういう状況だということが常時現場にも開示されるようになると、現場も危機感を抱くものですね。
この当時、ビジョン浸透は一旦優先度を下げたのですが、一方で目指すべき方向が明確になり、1人1人が今まで以上に「今、何をすべきか」を真剣に考え、走り出すきっかけになりました。
個人的には、当時の社長はキーワードを上手に使っていたように思います。(と、書くと万が一これを読まれてしまった時に、「上から目線だな、おい。」と怒られそうですが…笑)
この崖っぷち期から黒字化を達成するまでの数年間、経営からの大きな戦略キーワードは「島へ」でした。
第1回でお伝えしたように、ネクスウェイ内ではリクルートから分社独立することを「船出」と呼ぶことも多かったので、船出して、次の島へたどり着く=一旦黒字化するという意味を込めて、意図的に使われていたと記憶しています。
そんな中、経営の意思を現場に伝え、現場の状況や気持ちを明らかにするために社内報Movin’Cafe(現在の、このメディアの前身となるもの)が創刊されました。
以下は、第1号に書かれていたテキストです。
「ネクスウェイにとって今、求められていること。
それは、厳しい事業環境を戦略的に改革するリ-ダ-と、最大の価値である顧客接点の最前線に立つ現場のメンバ-、そして、それを支えるスタッフ。
今こそ一人ひとりが自ら機会を作り出し、挑戦していかなければらない。
トップダウンとボトムアップの両方が求められる中、Movin’Cafeはその両方の目線で立てる存在でありたい。
時には強い経営メッセ-ジを伝え、時には一従業員の目線で現場の声を代弁したい。
中間の立場にあるパブリッシャ-というよりも、それぞれの立場の本音が伝わるメディアにしていきたい。
それが、今のネクスウェイに求められるコミュニケ-ションのメディアだと考えます。」
これは、現場の1社員が書いたテキストですが、これを現場が書けるようになったことが、当時のネクスウェイのおいては大きな変化でした。
このことをきっかけに、キックオフや部会のようなリアルコミュニケーションにおいても、社内報やメルマガにおいても、いいところも悪いところも含め、オープンにしていく文化が生まれます。
苦しいながらもみんなが1つの目標に向かってがんばろう。
今は大変だけれども、未来に向けて、一旦しゃがみ、そこからジャンプしよう。
現場にもそういう雰囲気が徐々に起こってきました。
こんなことを経て、ネクスウェイは新規事業へチャレンジしていきます。
どんなチャレンジだったのか?それは、また次回に。