

2016年8月の第3次安倍内閣発足から、国をあげて取り組んでいる「働き方改革」。
個々の意思や能力、それぞれの事情に対し多様な働き方を選択し、
人々のワーク・ライフ・バランスを実現しながら、生産性を向上させる。
そういった背景から、昨今、より一層関心が高まっている”個人の働き方”。
一方で、本社移転を契機に、社内外を大きく巻き込む形となり、
”個人”だけでなく”組織の働き方”にまで影響が生まれている会社がある。株式会社ガイアックスだ。
彼らはソーシャルメディアとシェアリングエコノミーを事業領域とし、
法人向けと一般消費者向けの様々なサービスを展開している。
さらに、社外のシェアリングエコノミーサービスへ積極的に投資を行い、スタートアップの投資育成にも取り組んでいる。
今回は、同社の管理本部木村氏、高野氏に
社内・社外含め、コミュニケーション施策にかける想い・現状についてインタビューを行った。
管理本部木村氏(左)、高野氏(右)
―ガイアックスのミッション「Empowering the people to connect ~人と人をつなげる」の意図を教えてください。
ガイアックスは、1999年に上記のミッションとともに創業しました。
「人と人をつなげる」と聞くと「まぁそうですよね」となるのですが、
代表の上田が言うのは「脳と脳を繋げる」と表現します。
自分も他人も境目がわからないようになるぐらいの状態になれば、
「自分のため」と「他人のため」の境目も無くなり、もっと良い社会になるんじゃないの?という考えからきているんですよね。
他人のことがもっと自分事になれば、世の中のことがもっと解決できる。そんな想いがあります。
ー貴社の社内コミュニケーションに結びついた想い、現状についても教えてください。
また、貴社のビジョン/ミッションと社内、社外コミュニケーション施策が
どう結びついているかについてもお聞かせいただけますでしょうか。
全社会議を”自由参加”にしたことは大きな変化かもしれません。
「全社一丸」になるということを目的に実施していた過去は、「会社起点だった」と言えるのかもしれません。
現在は、「会社の為よりも自分のため」という考えのもと、個人の参加意志を大事にしています。
また、これまで行ってきた合宿や社員総会もフェイスブックのイベントページで公開するなどして、
できる限り多くの社内外の関係者に参加してもらうようにしました。
「参加者が大幅に減る」予想もあった中、驚いたことに参加者は100名を超え、
自由参加にしているからこそ場に加わる「参加者の意志」が従来よりも高まったと感じています。
また、社内だけでなく、社外の方も巻き込んだ施策に「かまめしランチ」というものがあります。
この「かまめしランチ」(=同じ釜の飯を食べる、という知らない人と4人組のシャッフルランチ)は
永田町を中心に開催され、誰でも参加できるようになっており、まさにミッションに紐付いた施策だと思います。
社内コミュニケーションの様子
1Fから2Fに上がる際に誰でも見れるイベント告知の掲示板があります。また、2F(執務室内)へとご案内いただいた際は、その場にいる方の内、半数程が社外の方だという様子を目の当たりにし、とても驚きました。
ー今後さらに社内外とつながるコミュニケーションをテーマに、実施していく予定の新たな仕組け、仕組み、
また、解決できればうれしい課題がありましたら、是非お聞かせください。
2017年に現在のオフィス、Nagatacho GRiDに移転してから様々な変化がありました。
社内ではカフェのように自由に使える席を利用する人が増加し、自然とフリーアドレスになっていき、
その流れからリモートワークが普及していきました。
また、リモートで仕事をする人が増えたことにより、会議室を使わなくなり、
会議室を予約するという文化がなくなりました。その結果、評価面談ですらオープンな場所で実施するようになっていきました。
現在では、2Fに位置する執務室の半分を社外の人に開放するようになり、
徐々にオフィス自体が社内外の区分けのないフリースペースとなっています。
私達は、オフィスをオープンにすることで、人同士の交流が促進されていると実感しています。
・出社したときに、突発的に起こる人の紹介、出会いがある。
・社外の方にも気軽に立ち寄ってもらえるため、対話の機会が増え、様々な生きた情報が入ってくることで、
新しく、面白い仕事に結びつくこともある。
地下1Fのイベントスペース(毎日誰かがイベントを実施しているそうです)
今後の目標として、「もっと社内外の切り分けをなくしたい」と思っています。
興味のある人がこのGRIDに集まり、何かを生み出せるような場所でありたい。
自分の人生を生きる中で、その延長線上に会社があればいいのではないか。
そのための空間でありたいし、そういう人たちが集まってほしい。
そうなると、最終的に行き着く形は、「雇用」ではなくなるとも考えています。
雇用関係の有無ではなく、「ここが好きだから」「誰かが好きだから」「これがやりたいから」
そんな人達が集まる場所を創っていきたいと思っています。
最近の例では、辞めた人であっても一緒に仕事をしていることがあるということですかね。
もっと言えば、辞めた後の方が一緒に仕事しているかもしれないですね。笑
編集後記:
個人の働き方が注目され、テレワークなどが注目されるようになった昨今、
会社と個人の関係は従来の様に主従ではなくフラットになり、
更に会社自体も自社だけで完結させようとせず、外に開いていく。
つまり、様々な企業や個人とのコラボレーションを通じて価値を創造することが、そこかしこで起き始めています。
日々タイムラインに流れてくるオープンイノベーションという文脈のニュースでは、
大企業とベンチャー企業が連合となり、シェアスペースで活動を始めている、
そんな様子が語られることが多いと思います。
実際、企業が持つ独自のノウハウやコンプライアンスの順守、
セキュリティのレベルを担保するという意味で、執務室内、
つまり、組織レベルで「滲み合っている」ケースはまだ稀です。
その点、今回取材したガイアックスのように「自社オフィス」を起点に
”社内外のコミュニケーション”の垣根をなくす働き方は今後注目を集めるかもしれません。