Movin Café

Vol.09

今ではインテリアやプレゼントの定番商品となっている、

Pacosが製造するボタニカリウムという商品をご存知でしょうか?

 

 

ボタニカリウム:Pacosのデザイナー細貝泉氏が生み出したスタイリッシュなフラワーアート。洒落たボトルに液体を注ぎ、その中にお花を飾る独自の商品。商品名にもあるボタニカルは「植物の」「植物から 採った」という意味がある。プレゼント用だけでなく、家のインテリアに自分用に買っていく方も急増中。ハーバリウムとも呼ばれる。

 

2018年2月、Pacosは伊勢丹で行われた催事に出店しました。

その順調な売れ行きから現在は伊勢丹新宿店にて常設されているというボタニカリウム。

個人でオーダーメイドフラワーを制作する活動をしていた細貝氏がPacosに加わったことで展開されるようになりました。

 

今ではボタニカルメーカーとして一番人気があると自負しているこの商品。

実は、この商品が製造されるまでに、秘められた「想い」のストーリーがありました。

 

 

とある福祉施設。

ここでは、心に病を抱える方、知的障害を抱える方が入居しており、

彼ら自身はお手紙に切手を貼るという仕事を持っていました。

 

細貝さんはそんな彼らと3年前に出会い、施設の責任者と交渉し、

新しい仕事 —— 商品パッケージ用のリボンを作ったり、シールを貼るといった作業 —— をお願いすることになりました。

 

ある時、そんな作業の現場をふと眺めていたら、それぞれの作業方法でリボンを完成させている様子が飛び込んできました。

驚きだったのは、彼らが自分たちの得意な部分で自然と「分業」という形で仕事を進めていたことです。

それは、自分ひとりで「モノ」をつくりあげていた自身のアーティスト活動とは違った光景でした。

それからというもの、彼らに製品自体の制作、つまり、お花のアレンジに直接関わる仕事もお願いしてみることにしました。

Pacos:「大切な思いを記憶し、人生に寄り添う花」をコンセプトに、Weddingから日常まで幅広いシーンに彩りを加えるフラワークラフト・ボタニカルメーカー。独自の技術と洗練されたデザインで生み出される商品で人気を博している。

 

 

しかし、簡単にはことが進みませんでした。

 

細い茎、か弱い花びら——

繊細な物だからこそ、ちょっとした力がかかると花材として使えないものになってしまう。

そのため、花材の取り扱いには独自のスキルを要します。

お花で繊細な作業を要する製品をつくるということ自体が、その道に明るくなければ難しいものなのです。

 

実際、施設の現場で「新しい仕事」として花材を取り扱うようになり、

いくつかの方法や進め方でチャレンジを進めるけれども、数百個とB級品が生まれてしまいました。

更に、改善を重ね、一見すると製品としてまとまった状態に見えたとしても、

商品として自信をもって卸せるクオリティにはもう2歩、3歩と到達していないことが続きました。

加えて、花材の管理も施設の負担になっており、施設としては「前の仕事」に戻したかったのだそうです。

きっと、どこかで、「前の仕事」に立ち返った方が良かった、と諦めることも選べたのかもしれません。

ただ、そうだと分かっていても、自ずとチームになり、ひとつのことを実現していたその可能性を信じて、

諦めずに、継続して、何度も施設へ教えに行きました。

 

自分が施設に行けない日にも、技術を伸ばせるようにと、

とある職員さんが申し出てくれて、彼女に少しの指導をお願いするようになりました。

 

こうして、なんとか形にすることができたのは、想いをもつ職員さんと出会えたおかげです。そしてなにより、難易度は高いものの、お花を扱うという仕事を楽しんで取り組んでくれる入居者の皆さんがいたからです。作業中は、みんなでお花の歌をつくって、歌いながら、作業を進めていた景色がありました。また、入居している皆さんを見守るご家族にも喜んでもらえました。そうして2年、だから試行錯誤を繰り返すことができ、完成させることができました。

 

細貝さんはじめPacosの皆さん、施設職員の皆さん、そして製作をしていただいた入居者の方々。

更に出来上がった製品を楽しみに見守っていただいた入居者のご家族。

そうした「想い」が結実するように完成した美しく洗練されたボタニカリウム(ハーバリウム)は、

冒頭の様に、大手百貨店で販売されるまでになりました。

 

ボトルという1つの空間の中に、見る人が美しいと思えるような花の選定やレイアウト、

そして余白まで緻密に計算されたボタニカリウム(ハーバリウム)は、これまでに累計2万個売れたのだそうです。

今後はもっとこうしたい!ということは実はそんなになくて。本当に素敵な商品、作品を、たくさんの方にお届けして、施設の方々のお仕事にしていきながら、一緒に関係性を育んでいきたいと思っています自分の作品が売り場にある!ということが、普段は引きこもりがちな入居者の方にとって外出するキッカケになり、作業をする彼らの喜びにつながっているのは本当に嬉しいことです。

と細貝さんは言います。

 

Pacosのデザイナー細貝氏

 

環境を準備する人、想いを受け取ってサポートする人、製品を作る人、

そのご家族、そして売る人の想いが結集したボタニカルな商品が広がる社会。

多様な想いがつながり”大切な思いが記憶された”ボタニカリウムを見かけた際には

ぜひ手にとっていただき、このストーリーを思い出していただきたいと思います。

 

文責:丸尾 拓也(Movin’ café編集長)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Related